
建物の寿命を左右する「かぶり厚」
鉄筋コンクリート造の建物は、鉄筋の引っ張る強さとコンクリートの圧縮する強さを組み合わせることで、高い強度を実現しています。この鉄筋コンクリート造において、『かぶり厚』は建物の耐久性を左右する重要な要素です。かぶり厚とは、鉄筋の表面からコンクリート表面までの最短距離のことを指します。
一見すると小さな距離に思えるかもしれませんが、このかぶり厚が建物の寿命を大きく左右します。なぜなら、かぶり厚は鉄筋を様々な要因から守る役割を担っているからです。適切なかぶり厚を確保することで、中性化や塩害といった劣化要因から鉄筋を守り、建物の安全性を長期的に維持することが可能になります。
もし、かぶり厚が不足しているとどうなるでしょうか?例えば、コンクリート構造物にひび割れが生じた場合、そこから雨水や空気中の二酸化炭素などが侵入しやすくなります。すると、コンクリートの中にある鉄筋が腐食し始める可能性が高まります。鉄筋が錆びて膨張すると、コンクリートにひび割れをさらに発生・拡大させ、最終的には建物の強度が低下し、安全性に大きな問題が生じる可能性があります。
かぶり厚は、建物の設計段階で適切に設定される必要があります。建物の用途や周辺環境、使用する材料などを考慮し、耐久性や安全性を確保するために必要な値を算出します。適切なかぶり厚を確保することで、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を高め、建物の寿命を延ばすことに繋がります。建物の安全性を守るためには、目に見えない部分にも気を配ることが大切です。かぶり厚はまさにその代表例と言えるでしょう。