千鳥

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建築方法

千鳥:建築における配置の妙

「千鳥」という語は、水辺に集まるチドリという鳥の歩き方に由来します。チドリは、波打ち際で餌を探す際、波が引いた後の砂の上を素早く走り、次の波が来る前にまた砂浜の上に戻ります。これを何度も繰り返すため、まるでジグザグに歩いているように見えるのです。この特徴的な歩き方が「千鳥足」という言葉の語源となっています。 このチドリの動きから着想を得て、建築の世界にも「千鳥」という言葉が使われるようになりました。建築における千鳥とは、部材を縦横ではなく、斜めにずらして配置する技法のことです。例えば、レンガやタイル、石材などを敷き詰める際に、一つ上の段の目地が、下の段の部材の中央に来るように配置します。これを繰り返すと、全体として斜めの模様が浮かび上がり、チドリの足跡のように見えることから、「千鳥掛け」や「千鳥積み」などと呼ばれています。 千鳥配置には、様々な利点があります。壁面にレンガを千鳥積みする際は、縦の目地が一直線に繋がらないため、建物の強度を高める効果が期待できます。また、床にタイルを千鳥状に敷き詰める場合、均等に力が分散されるため、一部分に負荷が集中しにくくなります。さらに、見た目の美しさも千鳥配置の特徴です。規則正しい中にも変化があり、単調さを避けることができます。 このように、千鳥という名前一つをとっても、自然界の生き物の動きを注意深く観察し、そこから得た知恵を建築技術に活かしてきた、昔の人々の知恵と工夫が感じられます。