製造物責任とPL法

製造物責任とPL法

不動産について知りたい

先生、『製造物責任法』って、不動産にも関係あるんですか?

不動産アドバイザー

いい質問だね。不動産そのものには直接関係ないんだよ。ただし、不動産に設置された設備、例えば、エアコンやエレベーター、給湯器などに欠陥があった場合に適用されることがあるんだ。

不動産について知りたい

なるほど。エアコンの故障で火事になったら、エアコンのメーカーに責任を問えるってことですね?

不動産アドバイザー

その通り!ただし、設置業者のミスが原因の場合は、メーカーではなく設置業者が責任を負う場合もあるから、注意が必要だね。

PL法とは。

『製造物責任法』(せいぞうぶつせきにんほう)という不動産関連の言葉について説明します。製造物責任法は、略して『製責法』(せいせきほう)とも呼ばれます。この法律は、消費者を保護するために作られました。もし、製品の欠陥が原因で、人の命や体、あるいは財産に損害が出た場合、被害を受けた人は、その製品を作った会社などに損害を賠償するように求めることができます。

製造物責任法とは

製造物責任法とは

製造物責任法、いわゆる生産物責任法は、製造物の欠陥が原因で消費者が損害を被った場合、製造業者などに賠償責任を負わせる法律です。正式名称は製造物責任法ですが、一般的にはPL法(生産物責任法)と呼ばれています。この法律は、消費者の生命、身体、そして財産を守ることを目的として制定されました。

私たちが日々使用する製品には、安全であることが求められます。しかし、製品の設計や製造、指示・表示などに欠陥があると、消費者に思わぬ危害が及ぶ可能性があります。例えば、欠陥のある家電製品が火災を引き起こしたり、玩具の部品が外れて子供が誤飲したりする事故が考えられます。このような場合、従来は消費者が製造業者の過失を証明しなければ損害賠償を求めることは困難でした。つまり、製造業者が製品を作る過程で注意を怠ったことを消費者が証明する必要があったのです。これは専門的な知識が必要で、消費者にとって大きな負担となっていました。

しかし、PL法の施行によって状況は大きく変わりました。PL法では、消費者は製造業者の過失を証明する必要がなく、製品に欠陥があったこと、そしてその欠陥が原因で損害が生じたことを証明すれば十分となりました。これは、消費者の負担を軽減し、被害の救済を容易にするための大きな転換です。

PL法は製造業者にとって厳しい責任を課す法律であるため、企業は製品の安全管理を徹底し、欠陥品の出荷を未然に防ぐ必要があります。具体的には、設計段階での安全性の確認、製造過程における品質管理、そして製品の使用に関する適切な指示・表示などが重要になります。PL法は、製造業者に安全な製品を作る責任を改めて認識させ、消費者の安全を守る上で重要な役割を担っていると言えるでしょう。

項目 内容
法律名 製造物責任法(PL法)
目的 製造物の欠陥による消費者への損害賠償
保護対象 消費者の生命、身体、財産
欠陥の種類 設計、製造、指示・表示など
PL法以前の消費者負担 製造業者の過失を証明する必要があった
PL法による変更点 消費者は製品の欠陥とそれが損害の原因であることを証明すれば十分
製造業者の責任 製品の安全管理の徹底、欠陥品の出荷防止
製造業者の必要な対策 設計段階での安全確認、製造過程の品質管理、製品使用に関する適切な指示・表示

製造物責任の対象

製造物責任の対象

製造物責任法、いわゆるPL法は、欠陥のある製品によって人が被害を受けた際に、製造業者など製品を作った側に責任を負わせる法律です。この法律が適用される製品、つまり製造物とは一体どのようなものを指すのでしょうか。

製造物とは、工場などで作られたり、加工されたりした”動かせる物”のことを言います。身近な例では、テレビや冷蔵庫、自動車などが挙げられます。これらは完成品ですが、PL法は完成品だけでなく、製品を構成する部品や、製品を作るための原材料にも適用されます。例えば、自動車のタイヤやエンジンといった部品はもちろん、鉄やプラスチックといった原材料も製造物とみなされます。

一方で、土地や建物といった不動産は、動かせる物ではないため、製造物には該当しません。また、電気やガスなどのエネルギーも、形のある物ではないため、製造物には含まれません。

さらに、自然の状態のまま、人の手が加えられていないものも製造物ではありません。例えば、山から切り出されただけの木材は、自然のままなので製造物ではありません。しかし、その木材を製材して建築資材に加工した場合、人の手が加わっているため、製造物とみなされます。同じように、原油は製造物ではありませんが、原油を精製してガソリンになると製造物となります。

このように、PL法は、製品の製造や加工に関わる欠陥に焦点を当てた法律です。そのため、製造物責任を問うためには、何が製造物に該当するのかを正しく理解することが重要になります。

対象 製造物? 理由
テレビ、冷蔵庫、自動車 工場などで作られた動かせる物
自動車のタイヤ、エンジン 完成品の一部である部品も製造物
鉄、プラスチック 製品を作るための原材料も製造物
土地、建物 × 動かせる物ではない
電気、ガス × 形のある物ではない
山から切り出されただけの木材 × 自然の状態のまま、人の手が加えられていない
建築資材に加工された木材 人の手が加えられている
原油 × 自然の状態のまま
ガソリン 原油を精製して人の手が加えられている

欠陥の種類

欠陥の種類

製造物責任法、いわゆるPL法における『欠陥』とは、製造物が本来持つべき安全性を欠いている状態を指します。これは大きく分けて、設計上の欠陥、製造上の欠陥、指示・警告上の欠陥の三種類に分類されます。

まず、設計上の欠陥とは、製品の設計そのものに問題があり、製造された全ての製品に共通して危険性を持っている状態です。設計図の段階で誤りがあったために、製造された製品全てに同じ欠陥が存在することになります。例えば、ある自動車の設計において、ブレーキ系統に構造的な問題があったとします。この場合、その設計に基づいて製造された全ての自動車に、ブレーキの効きが悪い、あるいはブレーキが効かなくなるといった欠陥が存在することになり、これは設計上の欠陥に該当します。

次に、製造上の欠陥とは、製品の設計は適切であるにもかかわらず、製造過程におけるミスによって、一部の製品のみに欠陥が生じている状態です。例えば、工場での組み立て作業中に部品の取り付けを誤ったり、検査工程で不具合を見落としたりした場合などが該当します。この場合、設計図通りに製造されていれば問題はなかったものの、製造過程でのミスによって一部の製品にのみ欠陥が生じています。

最後に、指示・警告上の欠陥とは、製品を安全に使うために必要な情報が不足している状態です。具体的には、取扱説明書に十分な注意書きがなかったり、製品に危険性を示す表示がなかったりする場合などが該当します。例えば、ある機械を安全に操作するために特定の手順を踏む必要があるにもかかわらず、取扱説明書にその手順が記載されていなかったとします。この場合、消費者は正しい使い方を理解できず、誤った操作によって怪我をする可能性があります。これは製品自体に欠陥があるというよりは、製品に関する情報提供に不備があることが原因で発生する欠陥です。

このように、欠陥には種類があり、それぞれ発生原因や影響範囲が異なります。それぞれの欠陥の種類を正しく理解することで、PL法が適用される場面を適切に判断できるようになります。

欠陥の種類 内容
設計上の欠陥 製品の設計そのものに問題があり、製造された全ての製品に共通して危険性を持っている状態。 自動車のブレーキ系統に構造的な問題があり、ブレーキの効きが悪い、あるいはブレーキが効かなくなる。
製造上の欠陥 製品の設計は適切だが、製造過程におけるミスによって、一部の製品のみに欠陥が生じている状態。 工場での組み立て作業中に部品の取り付けを誤ったり、検査工程で不具合を見落としたりした場合。
指示・警告上の欠陥 製品を安全に使うために必要な情報が不足している状態。 機械を安全に操作するために特定の手順が必要だが、取扱説明書にその手順が記載されていなかった。

責任を負う者

責任を負う者

製品に欠陥があったために人が死傷したり、物が壊れたりする事故が発生した場合、誰が責任を負うのか、はっきりさせておく必要があります。この責任の所在を明確にする法律が製造物責任法、いわゆるPL法です。この法律では、製品に欠陥があることで人に危害が生じ、または物が壊れた場合、その製品を製造した者、輸入した者、そして自らの名前などを製品に表示した者が責任を負うと定められています。

まず、製造した者、つまり製造業者は、製品を作る段階で安全性を確保する責任があります。材料の選定から製造工程、検査に至るまで、あらゆる過程で細心の注意を払わなければなりません。製品の欠陥は、製造業者の責任に直結するからです。

次に、輸入業者は、海外で製造された製品を国内に持ち込む際に、その製品の安全性を確認する責任があります。国内で販売される以上、国内の安全基準を満たしているか、欠陥がないかを厳しくチェックしなければなりません。輸入業者は、単なる仲介役ではなく、国内の消費者を守る上で重要な役割を担っているのです。

そして、表示業者は、製品に自分の名前などを表示することで、あたかも自分が製造業者であるかのように振る舞っている者です。このような表示業者は、製造業者と同様に製品の安全性に責任を持つことになります。消費者は、表示された名前を見て製品を購入するため、表示業者も製造業者と同等の責任を負うのは当然と言えるでしょう。

PL法は、消費者を保護するために、製造業者、輸入業者、表示業者に重い責任を課しています。これらの事業者は、製品の安全管理を徹底し、事故の発生を未然に防ぐための対策を講じる必要があります。そして、万が一事故が発生した場合には、被害者に対して迅速かつ適切な対応をしなければなりません。企業は、PL法の理念を理解し、消費者の安全を守るための努力を怠ってはならないのです。

責任者 責任の内容
製造業者 材料選定、製造工程、検査など、製品を作る全過程で安全性を確保する責任
輸入業者 海外製品を国内に持ち込む際に、国内安全基準を満たしているか、欠陥がないかを確認する責任
表示業者 製品に自らの名前などを表示することで、製造業者と同様に製品の安全性に責任を持つ

損害賠償の範囲

損害賠償の範囲

製造物責任法、いわゆるPL法における損害賠償の範囲についてご説明します。この法律は、製造物の欠陥によって人に危害が及んだり、所有物が損害を受けた場合に、製造業者等が責任を負うことを定めたものです。

まず、人の損害についてですが、これは大きく分けて三つの種類があります。一つ目は治療費や入院費、通院費といった医療費です。怪我や病気を治すためにかかった費用が対象となります。二つ目は休業損害です。怪我や病気のために働けなくなり、収入が減ってしまった場合、その減少分が損害として認められます。三つ目は後遺症による損害や死亡による損害です。後遺症が残ってしまった場合の生活への支障や、不幸にも亡くなってしまった場合の遺族への補償などがこれにあたります。

次に、物の損害についてです。これは欠陥品自体と、欠陥品によって損害を受けた他の物の二つに分けられます。例えば、欠陥のある電気温風機が原因で火災が発生し、電気温風機だけでなく家屋も焼けてしまった場合、電気温風機と家屋の両方が損害賠償の対象となります。ただし、欠陥品自体の損害については、製造業者等が自ら製造、輸入、表示した製品によって生じた損害のみが賠償対象となります。

他人の所有物に損害が生じた場合は、原則として1億円以上の損害に限って賠償責任が認められます。これは、少額の損害については、製造業者等に過大な負担を強いることを避けるための配慮です。

このように、PL法は消費者を保護するために、幅広い損害を賠償の対象としています。製造物によって不利益を被った場合は、この法律に基づいて適切な賠償を求めることが可能です。

損害の種類 内容 備考
人の損害 医療費(治療費、入院費、通院費など) 怪我や病気を治すためにかかった費用
休業損害 怪我や病気のために働けなくなり、収入が減少した分の損害
後遺症・死亡による損害 後遺症が残った場合の生活への支障や、死亡した場合の遺族への補償
物の損害 欠陥品自体の損害 製造業者等が自ら製造、輸入、表示した製品によって生じた損害のみが対象
欠陥品によって損害を受けた他の物 例:欠陥のある電気温風機で家屋が焼けた場合、電気温風機と家屋の両方が対象
他人の所有物への損害 原則として1億円以上の損害に限って賠償責任が認められる

製造業者の抗弁事由

製造業者の抗弁事由

製品を作った会社が、損害を賠償する責任を負わないための言い訳となる理由、つまり抗弁事由について説明します。製品に欠陥があったとしても、以下の三つの点を立証できれば、賠償責任を免れることができます。

一つ目は、欠陥の存在を知らなかった、そして、知る由もなかったことです。具体的には、当時の科学技術の水準では、その欠陥を予見することは不可能だったことを証明しなければなりません。最先端技術を駆使しても欠陥を発見できなかった、ということを示す必要があります。

二つ目は、部品を作った会社の責任で欠陥が生じたことです。完成品を作った会社が、部品会社から提供された部品に欠陥があったために、完成品にも欠陥が生じたという場合です。この場合は、完成品を作った会社は、部品を作った会社に責任を負わせることができます。例えば、自動車メーカーが、タイヤメーカーから購入したタイヤに欠陥があったために事故が発生した場合、自動車メーカーはタイヤメーカーに責任転嫁できる、といった具合です。

三つ目は、表示に関する責任の所在を明らかにすることです。製品に表示されている内容が間違っていたり、不適切であったりした場合、その表示をした会社以外の製造業者、輸入業者、表示業者は、その内容が間違っていること、不適切であることを知らなかった、また知るべき立場でもなかったことを証明する必要があります。例えば、販売店がメーカーから提供された誤った情報をそのまま表示していた場合、販売店は責任を負わない可能性があります。

このように、製品を作った会社には、自らの責任を争う機会が認められています。裁判では、これらの抗弁事由が認められるかどうかが争点となります。そのため、製品の欠陥にまつわる訴訟は、複雑で時間のかかるものになることが多いのです。

製造業者の抗弁事由