
無過失責任とは?概要と具体例
損害が起こった時、誰のせいなのか、つまり責任の所在をはっきりさせることはとても大切です。責任には、わざとやった「故意」、あるいは注意を怠った「過失」によるものと、故意や過失がなくても責任を負う「無過失責任」というものがあります。この無過失責任について詳しく見ていきましょう。
通常、誰かに損害を与えた場合、損害を与えた人に故意や過失があれば、その人が責任を負い、損害を賠償しなければなりません。しかし、世の中には故意や過失がなくとも、法律で賠償責任を負うと定められている場合があります。これが無過失責任です。
では、なぜこのような考え方があるのでしょうか。それは、特定の行為や状態は、それ自体に大きな危険を秘めているからです。例えば、危険な物質を扱う工場や、高い建物を所有していることなどが挙げられます。これらの行為や状態は、細心の注意を払っていたとしても、事故につながる可能性を完全に無くすことは難しいと言えます。もし事故が起きた場合、被害者は大きな損害を被る可能性があります。このような場合に、被害者の迅速な救済を図るためには、責任の所在を明確にしておく必要があるのです。そこで、無過失責任という考え方が導入されています。
無過失責任が適用される代表的な例として、公害や製造物責任が挙げられます。工場から有害物質が漏れ出し、近隣住民の健康に被害が出た場合を考えてみましょう。工場の経営者に故意や過失がなかったとしても、無過失責任の原則に基づき、経営者は損害賠償責任を負う可能性があります。製品に欠陥があり、使用者が怪我をした場合も同様です。このように、無過失責任は、被害を受けた人の救済と、社会全体の安全を守るために重要な役割を果たしているのです。