リロケーションで賢く資産運用

リロケーションで賢く資産運用

リロケーションとは

人が仕事などで別の場所に長く住むことになった時、それまで住んでいた家を空家にしておくのはもったいないと考える人は少なくありません。そんな時、リロケーションという仕組みを使うという方法があります。リロケーションとは、転勤や海外赴任などで一定期間家を空ける際に、その家を他の人に貸し出すことをいいます。

たとえば、会社から急に転勤を命じられたとします。単身赴任ならまだしも、家族全員で新しい土地へ引っ越すとなると、それまで住んでいた家はどうすればいいでしょうか。売ってしまうという選択肢もありますが、いずれ戻ってくる可能性があるなら、売却するのはためらわれるでしょう。そんな時、リロケーションを利用すれば、家を空家にしておくことなく、他の人に貸し出して家賃収入を得ることができます。

リロケーションのメリットは、家賃収入を得られることだけではありません。定期的に人が住むことで、家の換気や掃除などが行われ、家の劣化を防ぐ効果も期待できます。また、空き家にしておくことで発生する防犯上のリスクや、近隣住民とのトラブルを避けることにもつながります。

以前は、転勤などで家を空ける際に、家を貸し出すという考え方はあまり一般的ではありませんでした。しかし、近年は住まいの有効活用という視点から、リロケーションサービスを提供する会社も増えてきており、住まいの新しい活用方法として注目を集めています。リロケーションは、家を空ける人にとって、経済的なメリットだけでなく、安心感も得られる仕組みと言えるでしょう。

定期借家権の登場

家主と借り主の間で結ばれる賃貸借契約は、かつては借り主の方に有利な条件が多く、家主は契約の終了を望んでも容易に実現できないケースが少なくありませんでした。更新を拒絶するには正当事由が必要とされ、家主の都合だけでは契約を打ち切ることが難しかったのです。例えば、家主が自ら住むため、あるいは建物を壊して建て替えるためといった、明確な理由が必要でした。

しかし、社会の流動性が高まり、転勤や長期出張といった理由で一定期間だけ家を貸したいという家主のニーズが増えてきたことを背景に、2000年に新しい制度が導入されました。それが定期借家権です。この制度では、契約時にあらかじめ期間を定めておき、その期間が満了すれば自動的に契約が終了します。更新はありません。家主は更新拒絶の正当事由を示す必要がなく、期間満了をもって確実に家を取り戻せるようになったのです。

この定期借家権の登場は、転勤や出張に伴う住み替えを支援する『リロケーション』と呼ばれるサービスの普及を大きく後押ししました。家を空ける期間が決まっている家主にとって、安心して賃貸に出せる環境が整ったからです。従来のように、借り主に居座られて立ち退きを求めるといった面倒な事態を避けられるようになったため、気軽に賃貸経営を始められるようになりました。

また、定期借家権は借り主にもメリットがあります。契約期間が明確に定められているため、将来の住まいの計画を立てやすいという点です。いつまで住めるかがはっきりわかっているため、次の住まいの準備を余裕を持って進めることができます。このように、定期借家権は家主と借り主双方にとって、より柔軟な住まいの活用方法を提供する画期的な制度と言えるでしょう。

リロケーションの利点

住み替えによって、今住んでいる家を貸し出すことで、毎月決まった家賃収入を得ることができます。これは、空き家のままにしておくよりも大きな利点です。得られた収入は、新たな住まいの家賃の支払いや、生活費の足しにするなど、自由に使うことができます。例えば、赴任先での生活費の負担を軽くしたり、住宅ローンの返済に充てたりすることで、家計の助けとなります。

また、人が住むことで、家は自然と管理され、状態が保たれます。定期的に風を通したり、水道を使い続けることで、カビの発生や配管の劣化などを防ぐ効果が期待できます。空き家の場合、長期間放置されることで、建物が傷みやすくなってしまいますが、人が住むことで、そうした劣化の進行を遅らせることができるのです。適切に管理された家は、将来売却する際にも、より高い価値を維持できる可能性があります。

さらに、防犯の面でも大きな利点があります。人が住んでいる家は、空き家と比べて泥棒などの犯罪に遭いにくいため、防犯対策として有効です。定期的に人の出入りがあることで、周囲からの目も行き届きやすくなり、犯罪を未然に防ぐ効果が期待できます。空き家の場合、防犯対策を講じていても、犯罪の標的になりやすいというリスクがあります。

このように、住み替えによって家を貸し出すことは、収入を得られるだけでなく、家の維持管理や防犯対策にも繋がるため、様々な面でメリットがあります。安心して新たな場所で生活を始められるだけでなく、所有する家の価値も守ることができる、賢い選択と言えるでしょう。

家主のための注意点

住まいを貸し出す際、家主には様々な準備と心構えが必要です。まず、貸し出す家の状態を細かく確認することが大切です。壁や床、天井に傷みや汚れがないか、水回りや電気設備はきちんと機能しているかなどを調べ、必要な修理や修繕を行いましょう。入居者が快適に過ごせる状態にしておくことは、後々のトラブルを防ぐためにも重要です。

次に、家具や家電製品を備え付ける場合は、それぞれの品目と状態を明確にしておきましょう。冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの家電製品は、製造年やメーカー、型番などを記録しておくと便利です。家具についても、種類や大きさ、材質などをリスト化し、写真や動画で状態を記録しておくと、入居者との間で認識のずれを防ぐことができます。また、これらの設備の故障や修理に関する責任の所在も、あらかじめ契約書に明記しておくことが大切です。

さらに、賃貸借契約の内容についてもしっかりと理解しておく必要があります。契約期間や家賃の金額、更新料の有無、敷金や礼金の額、修繕責任の範囲など、重要な項目について入居者と十分に話し合い、合意形成を図ることが大切です。契約書は複雑な内容を含む場合もあるため、不明な点があれば、信頼できる不動産会社に相談することをお勧めします。

これらの手続きをスムーズに進めるためには、不動産会社に管理を委託する方法もあります。不動産会社は、物件の管理や入居者の募集、契約手続き、家賃の徴収、トラブル対応など、幅広い業務を代行してくれます。専門家の知識と経験を借りることで、家主は安心して賃貸経営を行うことができます。信頼できる不動産会社を選ぶことは、家主にとって非常に重要です。

これからの住まい方

これからの住まい方は、今までの考え方とは大きく変わってきています。持ち家を持つことが当たり前だった時代から、借りる、貸す、住み替えるといった様々な選択肢が生まれてきています。その中で注目されているのが、「リロケーション」という考え方です。

リロケーションとは、転勤や留学、配偶者の転勤など、人生の転機に合わせて住み替えを行い、使わない間は他の方に貸し出すという住まい方のひとつです。従来は、住む家が変わるということは、それまでの住まいを売却するか、空き家として維持するかの二択を迫られることが一般的でした。しかし、リロケーションでは、一時的に家を貸し出すことで、家の維持管理費用の負担を軽減できるだけでなく、新たな収入源を得ることも可能です。

リロケーションは単なる貸家経営とは一線を画しています。貸家経営では、入居者との関係はあくまでも貸主と借主というビジネスライクな関係になりがちです。一方、リロケーションは自分たちが再び住むことを前提としています。そのため、まるで自分の家族が住まうかのように、より大切に、より責任感を持って住宅を管理することになります。入居者も、家主が大切にしている家だからこそ、より丁寧に暮らしてくれる可能性が高まります。

これからの時代は、働き方も、暮らし方も、もっと自由に、もっと多様化していくでしょう。地方への移住や海外赴任など、人生の選択肢も広がることが予想されます。そのような変化の激しい時代において、リロケーションは、住まいに関する様々な課題を解決してくれる画期的な方法と言えるでしょう。住まいを賢く活用することで、人生をより豊かに、より自由に送ることができる、そんな新しい時代の幕開けです。