
現状復旧と原状回復の違い
現状復旧とは、建物を借りた当初の状態に戻す作業のことです。たとえば、事務所や住まいを借りて退去する際、入居時の状態に戻す必要があります。これは、単に掃除をするだけでなく、借りている間に生じた傷や変更を元に戻すことを意味します。
ただし、注意すべき点は、経年劣化や通常の使用による傷みは現状復旧の対象外であるということです。たとえば、時間の経過とともに自然と色あせてしまう壁紙の変色や、普通に生活する中でついてしまう床の小さな傷などは、現状復旧の必要はありません。一方で、入居者が誤って壁に穴を開けてしまった場合や、物を落として床に大きな傷をつけてしまった場合は、現状復旧として修繕する必要があります。また、許可なく壁の色を変えてしまった場合も、元の色に戻す必要があります。
現状復旧義務を果たさないと、敷金から修繕費用が差し引かれることがあります。敷金は、退去時の修繕費用に充てるためのお金なので、現状復旧が不十分な場合は、敷金で足りない部分を請求される可能性もあります。トラブルを避けるためには、あらかじめ賃貸借契約書をよく読み、現状復旧の範囲を確認しておくことが重要です。契約書に現状復旧に関する項目が具体的に記載されていない場合は、不明な点を貸主や不動産会社に確認し、認識のずれがないようにしておくことが大切です。
現状復旧は、建物の価値を維持し、次の入居者が気持ちよく利用できるようにするために欠かせないものです。適切な現状復旧を行うことは、貸主と借主双方にとって良好な関係を築き、円滑な賃貸借契約を実現するための重要な要素と言えるでしょう。