同時履行

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契約

請負契約の基礎知識

請負とは、ある特定の仕事を完成させることを約束し、その仕事が完成した時点で報酬を受け取る契約の形態です。仕事の完成が報酬の支払条件となる点が、請負における重要な特徴です。 例えば、家の建築を例に考えてみましょう。家を建てたい人が建築会社に家の建築を依頼する場合、建築会社は家を完成させることを約束し、依頼主はその完成した家に対して報酬を支払います。この場合、依頼主が求めているのは、建築作業に従事する職人さんの日々の労働力ではなく、完成した家という成果物です。 同じように、ソフトウェア開発でも請負契約がよく利用されます。企業がソフトウェア開発会社に特定の機能を持つソフトウェアの開発を依頼する場合、開発会社はソフトウェアを完成させることを約束し、企業は完成したソフトウェアに対して報酬を支払います。ここでも、企業が求めているのは、プログラマーの日々の作業ではなく、使える状態のソフトウェアという成果物です。 このように、請負では仕事の完成が目的となります。これは、労働者を雇用する雇用契約とは大きく異なる点です。雇用契約では、労働者が日々提供する労働力に対して報酬が支払われます。例えば、会社員は毎日会社で仕事をし、その労働に対して毎月給料を受け取ります。一方、請負では、最終的な成果物に対して報酬が支払われるため、仕事の進め方や労働時間は請負人の裁量に委ねられます。 請負契約では、仕事を請け負う側を「請負人」、仕事を依頼する側を「注文者」と呼びます。請負人は、注文者から依頼された仕事を完成させ、その成果物を注文者に引き渡す義務を負います。一方、注文者は、請負人が仕事を完成させた際に、約束した報酬を支払う義務を負います。このように、請負契約は、仕事の完成と報酬の支払いを中心とした、明確な役割分担に基づいて成立します。
契約

同時履行の抗弁権:取引の安全を守る盾

互いに義務を負う契約、例えば物の売買や、土地建物の賃貸借などでは、売り手と買い手、貸し手と借り手の双方が、それぞれ対応する義務を負います。このような契約を双務契約と言い、この双務契約において重要な役割を果たすのが、同時履行の抗弁権です。 同時履行の抗弁権とは、相手方が自分の義務を果たすまでは、自分の義務の履行を拒むことができる権利です。たとえば、あなたが土地を売却する契約を結んだとしましょう。あなたは買い手に土地を引き渡す義務を負い、買い手はあなたに代金を支払う義務を負います。このとき、買い手が代金を支払わないのに土地の引き渡しだけを求めてきたとします。このような場合、あなたは「代金を支払うまで土地は渡さない」と主張することができます。これが同時履行の抗弁権です。 この権利が認められるのは、互いの債務が対等な関係にあるからです。もし、同時履行の抗弁権が認められないとしたら、買い手は土地を手に入れた後、代金を支払わないかもしれません。そうなると、あなたは土地を手放した上に代金も受け取れず、大きな損害を被ることになります。反対に、買い手の立場から考えても、先に代金を支払ったのに、売り手が土地を引き渡してくれないかもしれません。どちらか一方だけが先に義務を果たすと、不公平が生じる可能性があるのです。 同時履行の抗弁権は、売買契約に限らず、賃貸借契約や仕事の請負契約など、双務契約一般に認められています。例えば、アパートの賃貸借契約では、貸し主は借り主に部屋を貸す義務があり、借り主は貸し主に家賃を支払う義務があります。借り主が家賃を滞納している場合、貸し主は「家賃を支払うまで部屋は使わせない」とは言えず、正当な手続きを踏まなければなりません。しかし、貸し主も「家賃が支払われるまで、部屋の修繕義務は負わない」と主張することはできます。これも同時履行の抗弁権に基づく主張です。このように、同時履行の抗弁権は、取引の安全を守るための重要な役割を果たしているのです。