
木の成長と早材
木は、四季の移り変わりとともに、その成長の仕方を変えていく生き物です。春の訪れとともに、木々は芽吹き始め、温かい日差しと豊富な雨を受けて、ぐんぐんとその背を伸ばしていきます。夏には、太陽の光をいっぱいに浴びて、活発に光合成を行い、栄養を蓄えます。この時期に作られる木材の部分は「早材」と呼ばれ、木の成長が盛んな時期に作られるため、細胞壁は薄く、色は淡く、まるで木の若い時期を表すように、みずみずしい印象を与えます。この早材は、木の年輪において明るい色の部分として現れます。
秋になると、気温が下がり始め、木の成長も徐々に緩やかになります。そして冬には、厳しい寒さから身を守るため、木は休眠期に入ります。この時期に作られる木材の部分は「晩材」と呼ばれ、成長がゆっくりであるため、細胞壁は厚く、色は濃く、緻密で硬いという特徴があります。この晩材は、木の年輪において暗い色の部分として現れます。一年の中で、淡い色の早材と濃い色の晩材が交互に作られることで、同心円状の模様、つまり年輪が形成されます。
この年輪を数えることで、木がどれだけの年月をかけて成長してきたのかを知ることができます。また、年輪の幅を観察することで、その年の気候条件を推測することも可能です。例えば、年輪の幅が広い場合は、その年は日照時間が長く、雨量も十分で、木にとって生育に適した気候であったと考えられます。逆に、年輪の幅が狭い場合は、日照不足や干ばつなど、木の成長にとって厳しい気候であったと考えられます。このように、木の年輪は、木の成長の歴史を刻むだけでなく、過去の気候変動を記録する貴重な資料でもあるのです。