応力

記事数:(2)

建築方法

建物を支える軸方向力

建物は、常に様々な力を受けながら立っています。自らの重さ、そこに置かれる家具や人の重さ、そして風や地震の力など、実に多様な力が建物には作用しています。これらの力の中でも、建物の構造を理解する上で特に重要なのが軸方向力です。 軸方向力とは、読んで字のごとく、部材の軸、つまり長さ方向に沿って働く力のことを指します。この力は、建物の骨組みを構成する柱や梁といった主要な部材に作用し、建物の安定性を左右する大きな要素となります。軸方向力は大きく分けて二つの種類に分類されます。一つは圧縮力、もう一つは引っ張り力です。 圧縮力は、部材を押し縮めるように働く力です。例えば、建物の重さを支える柱を想像してみてください。柱は、上から下へと押し下げる力、つまり建物の重さを常に受けています。これがまさに圧縮力です。複数階の建物であれば、上の階ほど大きな重さを支える必要があるため、下の階の柱にはより大きな圧縮力がかかります。 一方、引っ張り力は、部材を引っ張るように働く力です。吊り橋を思い浮かべると分かりやすいでしょう。吊り橋のメインケーブルは、橋桁を支えるために、常に引っ張られています。このケーブルにかかる力が引っ張り力です。天井から吊り下げられた照明器具を支える鎖なども、引っ張り力によってその役割を果たしています。 これらの軸方向力、圧縮力と引っ張り力は、建物の自重だけでなく、積載荷重と呼ばれる家具や人などの重さ、さらに地震や風の力など、様々な要因によって生じます。これらの力をどのように受け止め、分散させるか、そして最終的に地面へと伝えるか、ということが建物の構造設計においては極めて重要になります。適切な設計によって軸方向力を制御することで、建物の安全性を確保することができるのです。
素材

木材の狂い:原因と対策

木材の狂いとは、木材が本来のまっすぐな形状から変化してしまう現象のことです。具体的には、反ったり、曲がったり、ねじれたり、割れたりすることを指します。この狂いは、木材が天然素材であるがゆえに避けられない現象と言えるでしょう。 木材は、生きている木から切り出された後も、周りの環境に合わせて水分を吸収したり、放出したりを繰り返します。この水分の変化こそが、木材の狂いの大きな原因です。木材の内部は繊維で構成されており、水分を含んで膨張したり、乾燥して収縮したりする際に、繊維の方向や密度によって伸縮率が異なるために、力が偏ってしまい、狂いが生じるのです。 狂いの種類は様々です。例えば、板の面が全体的または部分的に凸状になる「反り」、板の縦方向に弓状に曲がる「曲がり」、木材の繊維方向がねじれる「ねじれ」、木材内部に割れが生じる「割れ」などがあります。これらの狂いは、木材の種類や乾燥方法、保管環境、加工方法など、様々な要因によって影響を受けます。 木材を選ぶ際には、これらの狂いがどの程度発生しているかを確認することが大切です。また、用途に適した木材を選ぶことも重要です。例えば、構造材には狂いの少ない木材が適しており、家具などには狂いが少なく、美しい木目が求められます。狂いを完全に防ぐことは難しいですが、適切な乾燥方法や保管方法、加工方法などを採用することで、狂いを最小限に抑えることができます。木材の性質を理解し、上手に付き合うことが、木材を長く、そして有効に活用するための鍵となるでしょう。